原価センタ配賦は、管理会計の中心的なプロセスの一つであり、企業内のコストを正確に割り当て、収益性を分析するために不可欠な仕組みです。この記事では、原価センタ配賦に関する基本的な概念、マスタ設定の手順、具体的なトランザクション、そしてSAPテーブル情報について詳しく解説します。
原価センタ配賦とは?
原価センタ配賦は、コストを発生源(原価センタ)から受領元(利益センタ、その他の原価センタ、またはWBSなど)へ再配分するプロセスです。この仕組みにより、以下のメリットが得られます。
- 正確なコスト管理: 各原価センタのコストを適切な受領元に割り当てることで、収益性の正確な評価が可能になります。
- 業績の可視化: 部門やプロジェクトごとのコスト構造を明確化します。
- 管理会計の効率化: コストの流れを一元的に管理し、経営判断の材料を提供します。
SAPにおける原価センタ配賦の仕組み
1. 配賦の種類
SAPでは、原価センタ配賦に以下の2種類があります。
- 一次配賦: 一次原価要素(例: 人件費や電気代など)を使用した配賦。
- 二次配賦: 二次原価要素(例: 部門間サービスのコスト)を使用した配賦。
マスタ設定
原価センタ配賦の正確な運用には、事前のマスタ設定が不可欠です。以下に、配賦マスタの構成要素と設定の概要を示します。
配賦に関する主要テーブル
以下のテーブルは、配賦プロセスを支える基盤として使用されます。
テーブルID | テーブル内容 |
---|---|
T811C | 配分:周期 |
T811D | 周期実行履歴 |
T811F | 要素 |
T811S | 配分:セグメント |
T811K | 配分:キー項目 |
T811PT | 周期実行グループ |
設定手順
- 周期の定義(T811C):
- 周期は、配賦を実行する単位を表します。
- T-CODE: KSU1(登録)/ KSU2(変更)/ KSU3(参照)
- セグメントの作成(T811S):
- 配賦のルールを設定するために使用。
- 各セグメントには、配賦対象の原価センタや利益センタ、配賦基準が登録されます。
- キー項目の定義(T811K):
- 配賦の詳細条件を設定。
- 例: 配賦率や対象範囲。
- 実行グループの管理(T811PT):
- 配賦を効率的に運用するためのグループ化。
配賦実行の手順
- 配賦のシミュレーション:
- 配賦の結果を事前に確認するには、T-CODE: KSU3(参照)を使用。
- 配賦内容の妥当性を確認。
- 配賦の実行:
- 実際の配賦を行う際には、T-CODE: KSU5(配賦実行)を使用。
- 結果はCO伝票に記録されます。
- 結果の確認:
- 配賦の結果は、テーブルT811DやCO伝票(COBK, COEP)を参照して確認できます。
トランザクションコード一覧
T-CODE | 内容 |
---|---|
KSU1 | 一次配賦:登録 |
KSU2 | 一次配賦:変更 |
KSU3 | 一次配賦:参照 |
KSU5 | 一次配賦:実行 |
KSU7 | 配賦シミュレーション |
KSV1 | 二次配賦:登録 |
KSV5 | 二次配賦:実行 |
具体的な例: 部門間コスト配賦
例: 部門Aで発生したオフィス賃料を部門B、部門Cに配賦する場合
- セグメントの作成(T811S)
- 配賦元:部門A(原価センタ)
- 配賦先:部門B(利益センタ)、部門C(利益センタ)
- 配賦基準:床面積(平方メートル)
- 周期の登録(T811C)
- 配賦を毎月末に実行する設定。
- 配賦実行
- T-CODE: KSU5を使用して実行。
- CO伝票に配賦結果が記録される。
まとめ
原価センタ配賦は、管理会計の中核となるプロセスであり、企業内のコストフローを明確に把握するために必要不可欠です。SAPでは、豊富なマスタ設定と柔軟なカスタマイズ機能を通じて、あらゆる業務要件に対応できます。正確な配賦のためには、関連テーブルやトランザクションの理解を深めることが重要です。
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