SAP COにおける原価計算マスタの基本情報と関連マスタ

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SAP CO(Controlling:管理会計)モジュールでは、企業が効果的なコスト管理と正確な原価計算を行うために、さまざまなマスタデータが使用されます。この原価計算マスタには、原価要素や原価センタ、活動タイプ、品目マスタ、BOMマスタ、作業区マスタ、作業手順マスタ、購買情報レコード、製造バージョン**などが含まれます。この記事では、これらの基本的な要素について、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。


1. 原価計算マスタとは?

原価計算マスタは、企業の原価計算やコスト管理に必要なすべての基本データを一元管理するためのマスタデータ群です。原価計算マスタを整備することで、製造業務や購買プロセスにおけるコストが可視化され、効率的なコスト管理が可能になります。

標準原価計算についてはこちらにまとめていますので、こちらを理解したうえで読んでいただけると、理解が進むかと思います。

SAPのCO(Controlling:管理会計)モジュールでは、原価管理とコスト効率化のためにさまざまなマスタデータを使用します。これらの原価計算マスタには、原価要素、原価センタ、活動タイプ、品目マスタ、BOMマスタ、作業区マスタ、作業手順マスタ、購買情報レコード、製造バージョン**などが含まれ、それぞれの設定方法やトランザクションコードも重要です。

以下に、関連するマスタの概要とトランザクションコードを一覧表で紹介します。


マスタ一覧

マスタ名称概要トランザクションコード
原価要素各コスト項目(直接費、間接費など)の分類KA01(作成)、KA02(変更)、KA03(表示)
原価センタ部門別のコスト集計単位KS01(作成)、KS02(変更)、KS03(表示)
活動タイプ作業ごとのコスト計算の基準KL01(作成)、KL02(変更)、KL03(表示)
品目マスタ製品や材料の基本データMM01(作成)、MM02(変更)、MM03(表示)
BOMマスタ製品を構成する部品のリストCS01(作成)、CS02(変更)、CS03(表示)
作業区マスタ製造現場で使用される作業場所や機械の情報CR01(作成)、CR02(変更)、CR03(表示)
作業手順マスタ製品の製造手順と順序を記録CA01(作成)、CA02(変更)、CA03(表示)
購買情報レコード仕入れ先ごとの材料情報を管理ME11(作成)、ME12(変更)、ME13(表示)
製造バージョンBOMや作業手順の異なるバージョンの設定C223(製造バージョンの作成・変更・表示)

2. 原価要素の設定方法

原価要素は、直接費や間接費などのコスト項目を管理するマスタデータです。原価計算の基盤となる情報であり、SAPで原価要素を設定することで、コストを細かく分類できます。

設定手順

  1. トランザクションコード: KA01(原価要素の作成)
  2. 手順:
    • KA01を入力して画面を開き、新しい原価要素の番号と説明を入力します。
    • 「原価要素カテゴリ」で、直接費・間接費などの分類を選択し、必要な情報を保存します。

3. 原価センタの設定方法

原価センタは、各部門や部署ごとのコスト集計単位です。原価センタを設定しておくことで、部門ごとに発生するコストを管理しやすくなります。

設定手順

  1. トランザクションコード: KS01(原価センタの作成)
  2. 手順:
    • KS01を入力して原価センタの作成画面を開きます。
    • 新しい原価センタ番号を設定し、部門名や説明を入力。
    • 「有効期間」を設定し、使用するコスト要素を追加します。

4. 活動タイプの設定方法

活動タイプは、作業ごとのコストを算出するための基準です。活動タイプを設定すると、特定の作業や機械稼働にかかるコストを管理できます。

設定手順

  1. トランザクションコード: KL01(活動タイプの作成)
  2. 手順:
    • KL01を入力して新しい活動タイプを作成します。
    • 活動タイプの名前と説明を入力し、原価センタに関連付けます。
    • 単位(例:時間、回数)を指定し、保存します。

5. 品目マスタの設定方法

品目マスタは、製品や原材料に関する基本データを管理するマスタです。品目マスタを設定することで、各品目の在庫情報や原価計算データを一元管理できます。

設定手順

  1. トランザクションコード: MM01(品目マスタの作成)
  2. 手順:
    • MM01を入力して新しい品目を作成します。
    • 品目コード、品目タイプ、業務範囲(プラントや保管場所)を指定。
    • 必要なデータを各画面タブで入力し、保存します。

6. BOMマスタの設定方法

BOMマスタ(部品表)は、製品を構成する部品や材料の一覧です。BOMを設定することで、製品の製造に必要な部品を特定し、製造計画の立案が可能になります。

設定手順

  1. トランザクションコード: CS01(BOMの作成)
  2. 手順:
    • CS01を入力して、新しいBOMを作成します。
    • 製品の品目コードを入力し、BOMの階層を設定。
    • 使用する部品や材料を追加し、数量を指定します。

7. 作業区マスタの設定方法

作業区マスタは、製造現場で使用される機械や作業場に関するデータを管理します。作業区の設定により、製造工程ごとの機械稼働や作業場所のコストを把握できます。

設定手順

  1. トランザクションコード: CR01(作業区の作成)
  2. 手順:
    • CR01を入力して、新しい作業区を作成します。
    • 作業区の名称、機械情報、コスト関連の設定を行います。
    • 使用する原価センタと活動タイプを関連付けます。

8.作業手順マスタの設定方法

作業手順マスタは、製品の製造手順と作業内容を記録するマスタです。作業手順を設定することで、製品の製造工程が標準化され、効率的な生産が可能になります。

設定手順

  1. トランザクションコード: CA01(作業手順の作成)
  2. 手順:
    • CA01を入力し、新しい作業手順を作成。
    • 品目コード、作業区、活動タイプ、作業内容を設定。
    • 各作業の標準時間を入力し、保存します。

9. 購買情報レコードの設定方法

購買情報レコードは、仕入れ先ごとの材料や部品の購買情報を記録するマスタです。仕入れ価格や納期、支払条件などを管理します。

設定手順

  1. トランザクションコード: ME11(購買情報レコードの作成)
  2. 手順:
    • ME11を入力して、新しい購買情報レコードを作成。
    • 品目コード、仕入れ先、購買組織を入力。
    • 価格や条件を設定して保存します。

10. 製造バージョンの設定方法

製造バージョンは、異なるBOMや作業手順を製造条件に応じて使い分けるための設定です。

設定手順

  1. トランザクションコード: C223(製造バージョンの作成・変更・表示)
  2. 手順:
    • C223を入力して製造バージョンを作成。
    • 製造する品目コードを入力し、使用するBOMや作業する作業手順を設定します。製造バージョンを複数登録することで、異なる製造方法や条件に応じて最適なプロセスを選択できます。

11. 各マスタの活用と管理のポイント

各マスタデータは、SAPの原価計算やコスト管理において不可欠な情報です。以下のポイントを押さえることで、効果的に活用できます。

管理ポイント

  1. 定期的な更新と確認: マスタデータが正確であることを維持するため、定期的にデータを更新し、変更があった場合は適切に反映することが重要です。
  2. バージョン管理: 製造バージョンやBOMなど、変更が頻繁に発生するマスタデータにはバージョン管理を取り入れ、過去のデータと現行データを明確に区別します。
  3. コスト配分の精度向上: 原価センタや活動タイプを正確に設定し、製品ごとのコスト配分が精度高く行えるようにしましょう。
  4. マスタデータの一元管理: 原価計算マスタのデータが統一されていることで、各部門での業務が効率化され、コスト管理がより正確に行えます。

まとめ

SAP COの原価計算マスタを適切に設定し、原価要素、原価センタ、活動タイプ、品目マスタなどのデータを整備することで、企業のコスト管理と生産効率が向上します。特に、製造業や在庫管理を伴う企業では、これらのマスタデータを活用することで正確な原価計算と在庫評価が可能になります。

各トランザクションコードを使いこなしてマスタデータを管理し、定期的なメンテナンスを行うことで、原価管理の精度をさらに高められます。SAP COモジュールの効果的な活用は、企業全体のコスト効率化と持続的な成長に貢献します。

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