SAP CO(管理会計)の「原価積上」は、製品やサービスの標準原価を計算するプロセスであり、企業の原価管理における重要な役割を担っています。本記事では、原価積上の概要、仕訳処理、関連テーブルについて初心者にもわかりやすく解説します。
1. 原価積上とは?
原価積上の概要
原価積上とは、製品やサービスの標準原価を計算するために、各構成要素の原価を集計・合算するプロセスです。
具体的には、材料費、労務費、製造間接費などの原価要素をBOM(部品表)や作業手順に基づいて計算し、製品単位の標準原価を算出します。
原価積上の主な用途
- 予算管理:生産コストを見積もり、予算計画を策定
- 製品価格設定:標準原価をもとに販売価格を決定
- 原価差異分析:標準原価と実際原価の差異を分析
2. 原価積上に関連するテーブル
原価積上のプロセスでは、以下のテーブルが主に使用されます。それぞれの役割を以下にまとめます。
テーブルID | テーブル内容 | 主な情報 |
---|---|---|
KEKO | 原価積上 – ヘッダデータ | 原価計算実行情報(例:計算日付、品目、バージョンなど) |
KEPH | 原価積上 – 製造原価の原価構成 | 原価構成ごとの詳細情報(例:材料費、加工費など) |
CKIS | 原価積上 – 明細化 | 品目ごとの標準原価明細 |
KALM | 原価積上実行 – 原価計算対象 | 計算対象品目のデータ |
KALA | 原価積上実行 – 一般データ/パラメータ | 計算のパラメータや条件 |
3. 原価積上の仕訳とデータの流れ
1. CK13Nを使用したデータ確認
- T-CODE:CK13N
CK13Nを実行すると、品目の標準原価が確認できます。画面では、原価構成(例:材料費、労務費、製造間接費など)を一目で把握できます。
2. CKISとKEPHの違い
- CKIS
品目ごとの標準原価を詳細に記録。BOMや作業手順のデータが基になっています。 - KEPH
原価構成(例:固定費、変動費)を切り口にしたデータを記録。分析やレポート作成に活用されます。
仕訳の例
原価積上の仕訳は、以下のように構成されます:
例:標準原価の計算
- 借方:材料費、労務費などの原価構成要素
- 貸方:標準原価合計
4. 原価積上プロセスの実行手順
1. 標準原価計算の準備
- 品目マスタでBOMや作業手順を設定
- 原価計算バージョンを定義(T-CODE:CK11N)
- 必要に応じて、代替BOMや製造バージョンを設定
2. 原価積上の実行
- T-CODE:CK40Nで原価計算を一括実行
- 実行結果はKEKO(ヘッダ)とKEPH(原価構成)に記録されます
- 必要に応じて、エラーログを確認し、データを修正
3. 計算結果の確認
- CK13Nを使用し、標準原価明細を確認
- 必要に応じて、CKISとKEPHを比較し、内訳を分析
5. 原価積上プロセスの具体例
例1:製造業の原価積上
- 製品Aを生産するために以下の原価構成が発生:
- 材料費:100円
- 加工費:50円
- 製造間接費:20円
- CK11Nで計算を実行
- CK13Nで以下のデータが確認される:
- 原価構成:材料費100円、加工費50円、製造間接費20円
- 合計標準原価:170円
例2:サービス業での原価積上
- サービスBを提供する際の原価構成:
- 人件費:500円
- 資材費:100円
同様に、原価積上プロセスを通じて計算・確認を行います。
6. 原価積上のポイントと注意点
- データの整合性を確認する
品目マスタやBOMの設定が正確でないと、正しい原価計算が行えません。 - CKISとKEPHを比較して理解を深める
CKISは品目ごとの詳細、KEPHは原価構成ごとの情報を提供します。
7. まとめ
SAP COの原価積上は、企業の原価管理における基盤となる重要なプロセスです。
- 関連テーブルを把握し、データ構造を理解する。
- CK11NやCK13Nを使用して、計算結果を確認する。
- CKISとKEPHを活用し、原価の内訳を正確に分析する。
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