「疎通テストでファイルが届いているのに、受信システムが処理してくれない…」
「ファイルが存在するのに“該当なし”と判定される…」
そんな経験はありませんか?
インターフェースの世界では、ファイル名の仕様がシステム間連携の成否を左右することがあります。
特にファイル名は設計書の記載が曖昧になりやすく、命名ルールの合意不足が原因で疎通テストがストップするケースも少なくありません。
この記事では、私が経験した「ファイル名仕様の不一致」によるエラー事例と、SAPプロジェクトでよく使われる命名パターン、そして防止策を紹介します。
発生状況と背景
疎通テストで、送信システムから受信システムへのファイル送信は正常に完了。
しかし、受信側で処理を実行しても「対象ファイルなし」という結果になりました。
原因を確認すると、受信システムは特定の命名規則(例:受注_YYYYMMDD.dat
)を満たすファイルのみを取り込む仕様になっていました。
一方で、送信側は日付フォーマットを YYYY-MM-DD
として出力しており、ファイル名が一致せず取り込み対象外となっていたのです。
技術的な背景
ファイル名は、システム間連携において以下の役割を持つことがあります。
- 処理対象の判別:ファイル名に含まれる日付や種別コードで処理可否を判断
- バージョン管理:連番やタイムスタンプで新旧ファイルを区別
- 運用制御:命名規則に合わないファイルは自動除外
このため、**フォーマットのズレ(記号や桁数、大文字小文字など)**は、受信システムでの自動処理を止める原因になります。
📦 用語解説:命名規則とは?
命名規則(Naming Convention)とは、ファイルやデータに一貫性を持たせるための名前付けルールです。
例:[処理区分]_[日付(YYYYMMDD)]_[連番].dat
このルールを守ることで、システムはファイルを自動的に識別・処理できます。
SAPプロジェクトでよくあるファイル命名パターン
SAPのインターフェースでは、ファイル名に取引種別・日付・連番を含めるのが定番です。
よくある構成は以下の通りです。
cssコピーする編集する[プレフィックス]_[処理日付]_[連番].[拡張子]
プレフィックス(Prefix)
- 送信元システム名/対象業務コード
例:SAPORD
(受注)、SAPINV
(請求)、SAPMAT
(品目マスタ) - 顧客コードや会社コードを含める場合もあり
例:SAP_JP01_INV_20250811_001.dat
処理日付
- フォーマットは
YYYYMMDD
が主流(例:20250811
) - 一部では
YYYY-MM-DD
やYYMMDD
も使われる - タイムスタンプ付き(例:
20250811_153045
)は、1日複数回送信する場合に有効
連番(Sequence No)
- 1日複数ファイルを送る場合に必須
例:001
,002
… - ゼロパディング(
001
)するかどうかは要件で明確化
拡張子
.dat
,.txt
,.csv
など- SAP側は固定長で
.dat
を使うことが多く、外部システムは.csv
が多め - 大文字小文字は仕様通りに統一
💡 運用上の注意点
- 命名規則は1行で明記する
例:「SAPORD_YYYYMMDD_NNN.dat
(小文字固定)」のように簡潔に仕様化する - 日付フォーマットの揺れを防ぐ
SAPのABAP側でSY-DATUM
を適切にフォーマット(WRITE … TO
またはCONVERSION_EXIT
) - 連番の桁数は固定
桁数が変わると受信側のパースが崩れることがある - 接頭辞や接尾辞に意味を持たせる
「送信データ」ならOUT
、「受信データ」ならIN
を入れるケースも多い - テスト・本番で同一ルール適用
疎通テスト用に命名規則を変えると、本番移行で事故が起きやすい
原因特定までの流れ
- 仕様書の確認
要件定義書・IF設計書に記載されたファイル名の命名規則を確認 - 実ファイル比較
送信されたファイル名と、受信側で想定している形式を比較 - 受信仕様の確認
受信プログラムやバッチ設定で、どの部分をチェックしているかを確認 - 修正と再テスト
送信プログラムまたは受信設定を修正し、命名規則に沿ったファイルで再疎通
防止策
- 要件定義段階
ファイル名の命名規則を、日付形式・桁数・大文字小文字・区切り記号まで明記 - 開発段階
送信プログラムで命名規則を固定化 - テスト段階
疎通テストで、仕様通りの命名規則ファイルで送受信を実施 - 運用段階
命名規則を運用マニュアル・開発チェックリストに記載し、新規開発時にも参照可能にする
まとめ
ファイル名は単なるラベルではなく、システム間連携の成否を決める「制御情報」です。
特にSAPプロジェクトでは、命名規則が曖昧だと疎通テストでエラーになりやすく、最悪の場合は本番で業務停止につながります。
要件定義から命名規則を正しく固め、テスト・運用まで一貫して守ることが、安定したインターフェース運用の第一歩です。
今回紹介した「ファイル名仕様の不一致」に加え、
「拡張子の大文字小文字問題」や「データ型の差異」など、疎通テストで起こりがちな課題も合わせて確認しておくことで、プロジェクトの品質とスケジュールを守ることができます。
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