本記事で解決できる課題
- AL11でできること/できないことを理解できる
- ファイルアップロードやダウンロードの正しいやり方がわかる
- 実務で起こりやすいトラブル(削除できない、ショートダンプを誘発するファイル配置など)を回避できる
1. AL11とは?
**AL11(SAP Application Server File Browser)**は、SAPアプリケーションサーバ上のディレクトリやファイルを参照するためのトランザクションコードです。
- 主な用途
- インターフェースファイル(CSV、TXTなど)の格納確認
- エラーログやジョブ出力ファイルの参照
- 一時ファイルの動作確認
👉 注意:AL11は閲覧専用。標準機能ではファイルの削除や名前変更はできません。
2. AL11でできること・できないこと
項目 | できること | できないこと |
---|---|---|
ディレクトリ表示 | ○ | – |
ファイル内容の参照 | ○(テキスト形式のみ) | – |
ファイル削除 | – | 標準機能では不可 |
ファイル名変更 | – | 不可 |
ファイルダウンロード | △(CG3Y推奨) | – |
ファイルアップロード | △(CG3Z使用) | – |
👉 削除やリネームはBasis権限やOSレベルでの操作が必要になるため、通常のアプリケーションコンサルは触れません。
3. CG3Y / CG3Z の役割
AL11単体ではアップロード・ダウンロードができないため、以下のトランザクションを組み合わせます。
- CG3Y(Download)
- AL11上のファイルをPCにダウンロードできる。
- 文字コードの違い(UTF-8/Shift-JISなど)に注意。
- CG3Z(Upload)
- PC上のファイルをAL11上にアップロードできる。
- 開発や検証環境でテストデータを配置する際に利用。
👉 実務では CG3Yでエラーログを取得 → Excelで解析、
または CG3Zでマスタや取引データのアップロード が定番の使い方。
4. 実務での注意点(トラブル事例付き)
(1) 削除できないファイル問題
一度CG3Zでアップロードしたファイルは、ユーザー側では削除できない。
不要ファイルが増えると、ディスク領域圧迫や混乱の原因になる。
対策
- 不要ファイルはBasis担当に削除依頼
- アップロード前に命名規則を決めて管理
(2) 誤ったファイルアップロードによる障害
- 誤フォーマットや巨大ファイルをアップロードすると、インターフェース処理が想定外のファイルを読み込み → ショートダンプやバッチエラーを発生させる。
例
- 数百万行のCSVを誤って配置 → バッチジョブがメモリオーバーでST22にダンプ
- 区切り文字不一致のファイル配置 → インターフェース異常停止
対策
- 検証環境で必ず事前テスト
- アップロードサイズやフォーマットのチェックを徹底
- ファイル命名に「TEST_」「Z_」など識別しやすいPrefixをつける
(3) システム全体に影響する可能性
AL11配下のファイルは、多くのインターフェースやジョブの入出力先になっている。
👉 誤った操作で他モジュールの処理が止まることもあり得る。
実務Tips
- 自分が触ってよいディレクトリかを確認
- 本番環境では極力Basisや開発担当経由で操作
5. よくあるFAQ
Q1. AL11でファイルを削除できますか?
→ 標準機能では不可。Basisチームに依頼。
Q2. アップロードしたファイルの文字化けが起きるのですが?
→ CG3Y/CG3Zの文字コード指定を確認。日本環境ではShift-JISやUTF-8の取り扱いに注意。
Q3. 本番環境でAL11を操作しても大丈夫?
→ 基本的には閲覧のみ。アップロードは要注意。事前にPJルールを確認。
6. 代表的なトランザクションコード
トランザクションコード | 機能 |
---|---|
AL11 | サーバ上のファイルブラウザ(閲覧用) |
CG3Y | サーバ → PC へのファイルダウンロード |
CG3Z | PC → サーバ へのファイルアップロード |
ST22 | ショートダンプの確認(誤アップロードの影響調査時に使用) |
7. まとめ
AL11は、インターフェースやジョブの稼働状況を確認するうえで欠かせない便利ツールです。しかし、操作範囲はあくまで「閲覧」が基本。アップロードやダウンロードを行う際はCG3Y/CG3Zを活用しつつ、誤操作が全社的な障害につながるリスクを常に意識する必要があります。
今回学んだAL11の知識は、日々の障害調査やインターフェース運用で即戦力になるスキルです。特に若手コンサルにとっては「システム全体の流れを俯瞰する」入り口にもなります。
さらに成長するためには、次のような学習が効果的です:
- ST22やSM37を組み合わせた「ジョブ監視とエラー調査の流れ」を理解する
- SPROの設定やインターフェース設計に踏み込み、AL11にファイルがどう流れてくるかを把握する
- Basisチームや開発チームとの役割分担を理解し、適切に依頼・調整できるようになる
👉 AL11をきっかけに「周辺ツールとどう連携するか」まで学んでいけば、コンサルとしての業務理解が一気に深まります。
AL11は便利なファイル参照ツールですが、誤ったファイルをアップロードするとジョブが異常終了することもあります。
その際に役立つのが ST22(ショートダンプ解析) です。実際にどのようにエラー内容を読み解き、原因を特定するのかはこちらの記事で解説しています。
👉 【SAP入門】ST22でショートダンプを読み解くコツ|AIを活用した原因特定の方法も紹介
書籍で勉強するのもおすすめです。
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