はじめに
SAPプロジェクトの資料や打ち合わせの中で、
OTC(Order to Cash) や PTP(Procure to Pay) といった言葉が、
前提知識のように使われる場面は少なくありません。
しかし実際には、
- 「SDやMMとは何が違うのか分からない」
- 「単なるSAP用語ではないのか?」
- 「なぜこの区分で話をする必要があるのか?」
と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、OTC・PTPといった業務プロセス区分について、
モジュールの話ではなく、業務整理の考え方として解説します。
OTC・PTPはSAP用語ではない

OTC(Order to Cash)とは
OTCとは、
受注から入金までの一連の業務プロセスを指します。
一般的には、以下のような流れを含みます。
- 受注
- 出荷指示・出荷
- 請求
- 入金・消込
重要なのは、
OTCはSDだけの話ではないという点です。
営業・物流・経理といった複数部署が関与する、
横断的な業務のまとまりを表しています。
PTP(Procure to Pay)とは
PTPは、
調達から支払までの一連の業務プロセスを指します。
- 購買要求
- 発注
- 入庫
- 請求書処理
- 支払
こちらも同様に、
MMやFIといったモジュール単位の話ではなく、
業務全体の流れを表す区分です。
なぜOTC・PTPという切り口が必要なのか
モジュール軸で考えると起きやすい問題
SAPに慣れていないうちは、
「これはSDの話」「これはFIの話」と、
モジュール単位で業務を捉えがちです。
しかしこの考え方では、
- 業務のつながりが見えにくい
- 部署間の責任範囲が曖昧になる
- 全体最適ではなく部分最適になりやすい
といった問題が発生します。
業務プロセス区分は「責任のまとまり」
OTC・PTPという区分の本質は、
業務と責任を一つの流れとして捉えることにあります。
- 誰が起点となり
- 誰が引き継ぎ
- 誰が最終的に責任を持つのか
これを整理するための切り口が、
OTC・PTPといった業務プロセス区分です。
SAP導入初期でのOTC・PTPの使いどころ
業務フロー整理との相性が良い
SAP導入初期では、
詳細な機能要件よりも、
業務全体の流れを把握することが重要です。
その際、
- まずOTC全体を俯瞰する
- 次にPTP全体を俯瞰する
という整理を行うと、
業務の抜け漏れや重複に気づきやすくなります。
部署間調整がスムーズになる
OTC・PTPという言葉を使うことで、
- 「これはOTCの中の話か?」
- 「PTP側で考えるべき論点か?」
といった整理がしやすくなります。
結果として、
部署間での認識合わせや役割分担がスムーズになります。
業務プロセス区分を使いこなすためのポイント
細かく分けすぎない
OTCやPTPは、
あくまで大きな業務のまとまりです。
最初から細かいサブプロセスに分解しすぎると、
全体像が見えなくなります。
導入初期では、
「OTCの中にどんな業務が含まれているか」
という粒度で十分です。
SAP機能に無理やり当てはめない
業務プロセス区分は、
SAPの機能構成と完全に一致する必要はありません。
先に業務の流れを整理し、
その後でSAPをどう使うかを考える。
この順番を意識することが重要です。
まとめ
OTC・PTPは、
SAP用語やモジュール区分ではありません。
- 業務全体を俯瞰するための切り口
- 責任と役割を整理するための考え方
として理解することで、
SAP導入初期の業務整理が格段にやりやすくなります。
まずは、
「これはどの業務プロセス区分の話か?」
と考えるところから始めてみてください。
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