SAPの在庫管理では、通常の在庫管理とは異なる特殊在庫区分がいくつかあります。その中でも「O(支給品在庫)」は、外部のサブコントラクター(外注業者)に提供される材料や部品を管理するために使用される重要な区分です。本記事では、「O(支給品在庫)」について初心者にもわかりやすく解説し、その業務プロセスや活用方法について詳しく説明します。
1. 支給品在庫(特殊在庫区分 O)とは?
支給品在庫とは、企業が外注業者(サブコントラクター)に加工や組み立てを依頼する際に、必要な部品や原材料を提供するための在庫です。外注業者は、提供された材料を使用して製品を完成させますが、その間、材料の所有権は依然として企業にあります。つまり、企業が所有しているが、物理的には外注先のサブコントラクターに保管されている在庫を管理するのが「支給品在庫」です。
支給品在庫の特徴:
- 所有権: 材料や部品の所有権は、外注業者に渡ることなく企業が保有します。
- 目的: 外注業者に製品を作らせるために必要な材料を提供するが、完成品が戻ってくるまで材料の管理を続けます。
- 在庫の場所: 実際の在庫はサブコントラクター(外注業者)のもとにありますが、システム上は企業が管理しています。
2. 支給品在庫の業務プロセス
SAPにおける支給品在庫を使用する場面では、以下の業務プロセスが一般的です。
2.1. サブコントラクターへの部品支給
企業は、製品の一部を外注業者に製造・加工してもらうため、材料や部品を外注業者に送ります。この際、支給する材料を支給品在庫として記録し、企業が引き続きその在庫を所有している状態を保ちます。
- SAPでの処理: 支給品として材料を外注業者に送る際には、SAPのトランザクションコード「ME2O」(支給品モニタ)を使用して、外注業者にどの部品がどれだけ送られているかを確認します。
2.2. 外注業者による製造・加工
外注業者が支給された部品や材料を使用して、製品の一部を組み立てたり、加工したりします。たとえば、自社で部品を製造して、外注業者に組み立てを依頼するケースが該当します。
- 所有権の変化: この段階では、材料の所有権は依然として企業にあります。
2.3. 完成品の受け取りと在庫管理
外注業者が完成品を納品すると、企業はその製品を受領します。この際、支給品在庫は消費され、完成品が新たな在庫として企業の倉庫に登録されます。
- SAPでの処理: 完成品の受け取りは、SAPの「MIGO」(入庫/出庫処理)トランザクションを使用して管理します。
3. 支給品在庫のメリット
支給品在庫を正確に管理することで、以下のようなメリットがあります。
3.1. 在庫管理の正確性向上
支給品在庫区分を使用することで、企業は外注業者にある在庫をリアルタイムで追跡し、必要に応じて在庫を補充することができます。これにより、外注先にある材料や部品の在庫状況を把握でき、計画的な在庫補充が可能になります。
3.2. コスト管理の向上
支給品在庫の管理によって、部品や材料がどのタイミングで消費され、どのようにコストが発生するかを正確に把握できます。企業は外注コストや材料の消費状況を詳細に管理できるため、コストの最適化が可能です。
3.3. 生産プロセスの柔軟性
外注業者に部品を支給して製品を作ることで、企業は内部リソースを効率的に使い、外注先の生産力を活用することができます。特に、内部リソースが限られている場合や、特殊なスキルが必要な場合には、このプロセスが効果的です。
4. 支給品在庫の活用例
活用例1: 自動車部品の製造業
自動車メーカーが部品をサブコントラクターに支給して、特定の部品やパーツの組み立てを依頼するケースです。企業は、外注業者に支給した部品の在庫をシステムで管理し、完成した部品が納品されるまでその在庫を追跡します。
活用例2: 電子機器製造業
電子機器メーカーが、部品の一部を外注業者に送ってプリント基板を組み立ててもらう場合も支給品在庫が活用されます。この際、メーカーは自社で製造した部品を外注業者に支給し、完成品として基板を受け取ります。
5. SAPでの支給品在庫の管理方法
支給品在庫の管理は、SAPのいくつかのトランザクションコードを使用して行います。
5.1. ME2O(支給品モニタ)
「ME2O」は、支給品在庫の管理や外注業者に送られた部品や材料のモニタリングに使用されます。このトランザクションを使うことで、外注先に支給された部品やその在庫状況を簡単に確認できます。
5.2. MIGO(入庫/出庫処理)
完成品が外注業者から納品されると、MIGOトランザクションを使用して在庫を更新します。支給された材料や部品は、ここで完成品として消費され、最終的に企業の倉庫に入庫されます。
まとめ
SAPにおける「特殊在庫区分 O(支給品在庫)」は、外注業者に対して部品や材料を提供しながら、その在庫を企業が引き続き管理するための重要な機能です。この機能を正確に運用することで、外注プロセスの効率化やコスト管理の向上が期待でき、外部リソースを活用した生産がスムーズに行えるようになります。支給品在庫の管理方法や業務プロセスを理解し、日々の業務に役立ててください。
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