SAP PP(Production Planning、生産計画)は、製造業における生産活動の効率化を図るモジュールです。本記事では、SAP PPモジュールを活用した生産プロセス全体の流れと、各フェーズの役割について初心者にも分かりやすく解説します。キーワードとして「計画独立所要量」「MPS・MRP」「CRP」「製造指図」「製造実績」を取り上げ、各プロセスの基本とその関連性を説明していきます。
1. SAP PP全体プロセスの概要
SAP PPの生産プロセスは、製造計画から実績記録まで一連のフローで管理されます。主なプロセスは以下の通りです:
- 需要計画と計画独立所要量(PIR)
- 主生産計画(MPS)と資材所要量計画(MRP)
- 能力計画(CRP)
- 製造指図の作成
- 製造実績の記録と確認
この流れを通して、製造に必要な資材やリソースを最適化し、効率的な生産が実現されます。
2. 計画独立所要量(PIR):需要計画のスタート
**計画独立所要量(PIR: Planned Independent Requirement)**は、予測された製品需要を表します。PIRは、販売予測や過去の販売データに基づいて計画され、製造計画の第一段階として設定されます。
- ポイント:
- PIRは、外部からの受注(外部要因)ではなく、予測(内部要因)に基づいて設定されます。
- これにより、将来の生産計画の基礎が作られます。
3. MPSとMRP:資材計画の核
計画独立所要量をもとに、製造プロセスの中核となる計画が実行されます。
MPS(Master Production Schedule:主生産計画)
**主生産計画(MPS)**は、特定の重要品目(例えば主要な製品)に対して、より詳細で精度の高い生産計画を立てるプロセスです。
- ポイント:
- 製造上重要な製品に限定して行われる計画です。
- MPSを活用することで、製造ラインに負荷をかけずに生産が計画されます。
MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)
MPSで計画された品目以外も含め、全ての製造品目に対して必要な資材の所要量を計画するのがMRPです。MRPでは、部品や材料の在庫状況、発注タイミング、リードタイムなどを考慮して、最適な資材供給を確保します。
- ポイント:
- 必要な部材が不足しないよう、計画的に資材を調達・発注します。
- 自動的に発注計画を作成することで、在庫コストの削減が可能です。
4. CRP(Capacity Requirements Planning):能力計画
**能力計画(CRP:Capacity Requirements Planning)**は、MRPで算出された所要量に基づき、製造ラインや人員などのリソースが過不足なく確保されているかを確認するプロセスです。
- ポイント:
- 各製造ラインや工程に必要なリソースが割り当てられているかを確認します。
- CRPによって、過剰な生産負荷を避け、効率的な製造が促進されます。
5. 製造指図の作成
製造指図は、実際の製造現場で行うべき具体的な作業内容を指示するための指図書です。製造指図には、品目、数量、納期、使用する材料などの情報が含まれます。
- 製造指図の作成手順:
- 製造する品目の仕様や数量を確定します。
- 必要な部品や材料、作業手順を指図に反映させます。
- 製造指図を発行し、現場に指示を行います。
- トランザクションコード:
- CO01:製造指図の登録
- CO02:製造指図の変更
- CO03:製造指図の照会
製造指図を作成することで、製造ラインはスムーズに作業を進行することができます。
6. 製造実績の記録
製造が完了した後、製造実績を記録することが必要です。製造実績は、実際の生産状況やコストを分析するための基礎データとなります。
- 製造実績の登録:
- 作業の進捗状況や使用した資材、発生したコストをSAPに入力します。
- これにより、計画と実績の差異が分析でき、製造プロセスの改善に役立てられます。
- トランザクションコード:
- CO11N:製造実績の登録
- CO19:製造実績の完了確認
まとめ
SAP PPモジュールにおける生産プロセスは、PIRによる需要計画から製造指図の作成、製造実績の記録に至るまで、多岐にわたるステップで構成されています。それぞれのプロセスが連携し、効率的な生産とコスト管理を実現します。SAP PPの基本的なプロセスを理解することで、製造業における生産管理の精度が向上し、安定した供給体制を築くことが可能です。
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