本記事では、SAPのMPS(主生産計画)とMRP(資材所要量計画)の計算方法について具体例を交えながら説明します。所要量計算やロットサイズ、BOM(部品表)といった要素の役割や具体的な計算手順を理解することで、効率的な生産計画の立案が可能になります。
1. MPSとMRPの基本概要
**MPS(主生産計画)**は、主要な製品の生産計画を立案するための計画プロセスです。一方、**MRP(資材所要量計画)**は、製品に必要な部品や材料がいつ・どれくらい必要かを計算し、発注タイミングを管理します。
2. MPS・MRPの計算の具体的な流れ
(1) 計画の立案
製品Aを生産するために、10個の受注があったと仮定します。現在、製品Aの在庫は3個で、来週に5個の発注予定がある場合の流れを見ていきましょう。
- 需要の確認:製品Aに対する需要(10個)が確認されます。
- 在庫の確認:現在の在庫量(3個)と発注予定(5個)が反映されます。
- 不足分の計算:10個の需要に対して在庫と発注予定を引き、残り2個が不足していると判断されます。
(2) 所要量計算の具体例
次に、製品Aの製造に必要な部品について、BOM(Bill of Materials:部品表)を使って具体的に計算します。
- 製品Aの製造には、部品Bと部品Cが各1個ずつ必要だとします。
- 部品Bにはさらに原材料Dが2個必要です。
計算例:
- 製品Aの所要量:2個
- 部品Bの所要量:製品A1個につき部品B1個必要 → 2個
- 部品Cの所要量:製品A1個につき部品C1個必要 → 2個
- 原材料Dの所要量:部品B1個につき原材料D2個必要 → 4個
このようにBOMを元に、必要な資材の合計が計算されます。
(3) ロットサイズ計算の具体例
MRPでは、部品や材料の発注単位であるロットサイズも考慮します。ロットサイズが適切でないと、余剰在庫や不足が発生するリスクがあります。
例として、部品Bを50個単位で発注するルールがある場合、このロットサイズをもとに発注数量を調整します。
- 部品Bの必要数量が30個であれば、50個発注する必要があります。
- 必要数量が60個であれば、50個を1ロット、さらに10個を加え、合計100個の発注が行われます。
3. MRP実行の具体的なトランザクションコード
SAPでMRPを実行する際には、次のトランザクションコードを使用します。
- MD01:全体のMRP実行(計画領域全体を対象)
- MD02:単品目のMRP実行
- MD04:在庫/所要一覧の表示
操作手順例(MD01の使用):
MD01
を入力し、MRPを実行する計画領域を選択します。- 必要なパラメータを入力し、「実行」をクリックします。
- 計算結果が表示され、必要な発注や調整が確認できるようになります。
4. BOM(部品表)を使った計算例
BOM(部品表)は、製品の構成を明確にするためのリストです。例えば、製品AのBOMが以下のようになっているとします。
製品 | 必要部品 | 数量 |
---|---|---|
製品A | 部品B | 1 |
製品A | 部品C | 1 |
部品B | 原材料D | 2 |
このBOMをもとに、MRPが部品BとC、さらに原材料Dの所要量を自動的に計算します。このようにBOMをもとに資材の所要量が細かく計算され、発注のタイミングが決定されます。
5. 計画結果の確認と調整
計画結果を確認するために、MD04
で在庫/所要一覧を確認します。この画面で、在庫と所要量のバランスが一目でわかります。
まとめ
MPS・MRPを活用することで、製品の生産計画を効率的に行い、余剰在庫や不足のリスクを軽減できます。具体例を通じて、所要量計算やロットサイズ計算、BOMの役割を理解し、日々の計画業務に活用していきましょう。
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