SAPのMRP方針グループは、生産計画や所要量計算を効率化するための重要な設定です。本記事では、設定値の詳細、使用シナリオ、具体的な実行プロセスを網羅的に解説します。
目次
- MRP方針グループの基本
- 設定値の一覧と特徴
- 具体的なシナリオと実行プロセス
- 適切なMRP方針グループの選択方法
- まとめ
1. MRP方針グループの基本
MRP方針グループは、生産計画戦略や所要量計算の挙動を設定する重要な項目です。以下の要素を制御します:
- 計画独立所要量や受注の管理
- 見込生産、受注生産の区別
- 総所要量計画や組立レベル計画の選択
設定は品目マスタのMRP 3ビューで行います。
2. 設定値の一覧と特徴
以下は設定値とその特徴の一覧です:
設定値 | 名称 | 特徴 | 生産方式 |
---|---|---|---|
10 | 見込生産 | 計画独立所要量を基にした在庫補充の生産。 | 見込生産 |
11 | 見込生産/総所要量計画 | 総所要量計画で全階層の品目を計画。 | 見込生産 |
30 | ロット生産 | 必要に応じたロットサイズで計画。 | 見込生産 |
40 | 最終組立ありの計画 | 最終段階で受注に基づき組立。 | 見込生産 |
70 | 組立レベルでの計画 | 見込生産だが主要部品に特化した計画。 | 見込生産 |
20 | 受注生産 | 顧客受注が発生した時点で生産開始。 | 受注生産 |
50 | 最終組立なしの計画 | 半製品や部品にフォーカスした受注生産。 | 受注生産 |
74 | 最終組立なしの組立品目計画 | 複雑な構成品を受注生産で対応。 | 受注生産 |
3. 具体的なシナリオと実行プロセス
設定値10:見込生産
シナリオ
- 業界:飲料や日用品メーカー
- 状況:需要予測に基づき、大量生産を迅速に行う。
実行プロセス
- 計画独立所要量(
MD61
)を登録 - MRP実行(
MD02
)で所要量計算 - 計画指図(
MD04
)を確認 - 計画指図を生産指図(
CO01
)へ変換
設定値11:見込生産/総所要量計画
シナリオ
- 業界:機械部品の製造業
- 状況:全階層の品目を一括計画する必要がある場合。
実行プロセス
- 計画独立所要量(
MD61
)を登録 - MRP実行(
MD50
)を実施 - 部品と完成品を同時に計画
- 計画指図を生産指図に変換
設定値30:ロット生産
シナリオ
- 業界:食品や化学工業
- 状況:固定ロットサイズで計画を行い、生産効率を向上。
実行プロセス
- 計画独立所要量(
MD61
)を登録 - ロットサイズ(品目マスタで設定)に基づきMRP実行(
MD03
) - 計画指図を生産指図(
CO01
)へ変換 - ロットごとに生産を進行
設定値40:最終組立ありの計画
シナリオ
- 業界:家電、自動車メーカー
- 状況:基本部品は見込生産、カスタマイズ部分は受注対応。
実行プロセス
- 計画独立所要量(
MD61
)で基本部品を計画 - MRP実行(
MD02
)で基本部品の所要量を生成 - 受注(
VA01
)を登録 - 生産指図を受注仕様に合わせて生成(
CO41
)
設定値70:組立レベルでの計画
シナリオ
- 業界:航空機や大型機械の製造業
- 状況:主要な組立部品のみを見込生産。
実行プロセス
- 計画独立所要量(
MD61
)で主要部品を計画 - MRP実行(
MD02
)で計画生成 - 主要部品の在庫を確保し、最終組立は受注ベースで実施
設定値20:受注生産
シナリオ
- 業界:カスタムメイド製品(家具、特殊機械)
- 状況:受注時にのみ生産開始。
実行プロセス
- 受注(
VA01
)を登録 - MRP実行(
MD50
)で受注所要量を計算 - 生産指図(
CO08
)を作成し実行 - 製造後、出荷(
VL01N
)
設定値50:最終組立なしの計画
シナリオ
- 業界:電子部品、半導体製造
- 状況:中間部品のみ生産し、最終製品は別工程で組立。
実行プロセス
- 受注(
VA01
)に基づきMRP実行(MD50
) - 必要部品の計画指図生成
- 中間部品を製造し在庫化
設定値74:最終組立なしの組立品目計画
シナリオ
- 業界:特殊構成品(精密機器や医療機器)
- 状況:複雑な製品構成で部品単位の生産を行う。
実行プロセス
- MRP実行(
MD50
)で構成部品の計画生成 - 生産指図(
CO41
)で部品単位で製造開始 - 各部品をストックし、別途組立
まとめ
MRP方針グループは、生産戦略や企業の需要特性に応じて選択することで、生産計画プロセスを最適化できます。設定値ごとの特徴とシナリオを理解し、ビジネスに適した設定を採用しましょう。
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