SAPのPP(生産計画)モジュールにおけるロットサイズ設定は、MRP(資材所要計画)実行時に「どれだけの量を生産・購買するか」を決定するための重要な設定です。本記事では、ロットサイズの基本的な概念、設定方法、手配数量の決定方法について初心者にもわかりやすく解説します。
1. ロットサイズとは?
ロットサイズとは、MRPによって計算された所要量に基づき、生産または購買の計画を行う際の数量を定義するものです。
正確なロットサイズの設定は、以下の効果をもたらします:
- 生産・購買の効率化
必要な量を最適化して手配することで、リソースの無駄を防ぎます。 - コスト管理の最適化
手配頻度や在庫コストを管理し、トータルコストを最小化します。 - 在庫リスクの削減
需要に合わせた手配が可能になり、過剰在庫や欠品のリスクを軽減します。
2. ロットサイズ設定の基本概念
ロットサイズ設定は品目マスタで行い、最小ロットサイズや最大ロットサイズ、丸め数量といったパラメータを設定することで手配数量が制御されます。
主な設定項目
項目名 | 説明 |
---|---|
最小ロットサイズ | 手配する際の最低数量を定義。 |
最大ロットサイズ | 手配できる最大数量を定義。 |
丸め数量 | 手配数量を一定単位で切り上げ・切り捨て。 |
安全在庫 | 常に確保しておくべき在庫量を定義。 |
計画カレンダ | 手配可能なタイミングを制御(例:月ごと、週ごと)。 |
3. ロットサイズ設定方法
ロットサイズの設定は、品目マスタ(トランザクションコード:MM02
)のMRPビューで行います。
設定手順
- 品目マスタを開く
トランザクションコードMM02
を使用。 - MRP 1ビューを選択
ロットサイズの設定項目を確認。 - ロットサイズパラメータを入力
- 必要な最小ロットサイズ、最大ロットサイズを指定。
- 丸め数量や安全在庫を設定。
- 保存して反映
設定が保存されると、MRP実行時に適用されます。
4. 手配数量の決定ロジックと計算例
MRP実行時には、設定したロットサイズパラメータに基づいて手配数量が計算されます。
計算ロジック
- 必要量を計算(例:需要量 – 在庫量)。
- 設定されたロットサイズを考慮して数量を調整。
- 最大ロットサイズや丸め数量に基づき最終数量を決定。
計算例
例1:最小ロットサイズの適用
- 需要量:50個
- 在庫量:10個
- 最小ロットサイズ:100個
- 計算結果:100個(最小ロットサイズを適用)。
例2:最大ロットサイズの適用
- 需要量:300個
- 在庫量:50個
- 最大ロットサイズ:200個
- 計算結果:200個(最大ロットサイズを適用)。
例3:丸め数量の適用
- 需要量:155個
- 丸め数量:10個単位
- 計算結果:160個(10個単位に切り上げ)。
5. 実務におけるポイント
需要変動への対応
需要が不安定な場合、丸め数量や最大ロットサイズを柔軟に設定することで対応可能です。
リードタイムとの調整
ロットサイズの設定はリードタイムとも密接に関係します。過剰な手配を避けるため、リードタイムに応じた設定を行いましょう。
トラブルシューティング
- 過剰在庫が発生する場合
最小ロットサイズが大きすぎる可能性があるため、適切に見直します。 - 欠品が発生する場合
最大ロットサイズや安全在庫量を再設定して対処します。
6. まとめ
ロットサイズ設定は、SAPのPPモジュールで生産計画や購買計画を最適化するための重要な要素です。最小ロットサイズや最大ロットサイズ、丸め数量を適切に設定することで、コスト削減や在庫リスクの軽減が実現できます。
次回の記事では、ロットサイズ設定のベストプラクティスと業界ごとの適用例について詳しく解説します!
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