ロットサイズ設定は、MRP(資材所要計画)を通じた生産・購買計画において重要な役割を果たします。しかし、設定ミスや不整合が原因で、手配量の誤りやエラーが発生することがあります。本記事では、ロットサイズ設定に関するよくあるトラブルと、その解決策を具体的かつ詳細に解説します。
ロットサイズの概要について知りたい人は本記事の前に、以下の記事を読んで頂けるとより理解が深まると思います。
1. ロットサイズ設定でよくあるトラブル
1. 手配量が適切に計算されない
- 現象: 実際の需要量に比べ、手配量が過剰または不足する。
- 原因: ロットサイズパラメータ(最小ロットサイズ、最大ロットサイズ、丸め数量など)の設定ミスや、不適切な設定値。
2. 在庫過剰または欠品が発生する
- 現象: 必要以上の在庫が積み上がる、または不足して生産ラインが停止する。
- 原因: 安全在庫やリードタイムの考慮不足、または需要変動に対する対応が不十分。
3. MRP実行時にエラーが発生する
- 現象: MRP実行時に「ロットサイズエラー」や「設定値が不適切」というメッセージが表示される。
- 原因: 品目マスタやMRPグループの設定値に誤りがある、または関連するデータ(計画カレンダなど)が不足している。
2. トラブルシューティングの詳細解説
1. 手配量が適切に計算されない場合
確認項目
- 最小・最大ロットサイズの確認:
- 品目マスタ(トランザクションコード:
MM02
)のMRP 1ビューで「最小ロットサイズ」「最大ロットサイズ」の設定値を確認。 - 最小ロットサイズが実際の需要量よりも大きすぎる場合、手配量が過剰になる可能性があります。
- 品目マスタ(トランザクションコード:
- 丸め数量の確認:
- 丸め数量が設定されている場合、手配量がその単位で切り上げ・切り捨てられることを確認。
具体的な解決策
- 最小ロットサイズの調整:
実際の需要量に応じて最小ロットサイズを再設定します。例えば、需要量が50個の場合、最小ロットサイズを50個以下に調整。 - 丸め数量の見直し:
切り上げ・切り捨ての結果が過剰在庫を招いている場合、丸め数量を「0」またはより小さな単位に設定。 - MRP実行シミュレーション(
MD02
):
設定変更後にシミュレーションを実施し、手配量が期待通り計算されるか確認。
2. 在庫過剰または欠品が発生する場合
確認項目
- 安全在庫の設定:
- 品目マスタの「安全在庫」フィールドに適切な値が入力されているか確認。安全在庫が過剰である場合、在庫が余剰となる可能性があります。
- 需要変動への対応:
- 過去の需要データを確認し、変動の大きさを分析。変動が激しい場合は動的ロットサイズ(
DY
)の設定を検討。
- 過去の需要データを確認し、変動の大きさを分析。変動が激しい場合は動的ロットサイズ(
具体的な解決策
- 安全在庫の再評価:
必要最低限の安全在庫を再計算し、品目マスタに反映。例えば、需要量が50~100個の範囲で変動する場合、安全在庫を70個程度に設定。 - 需要パターンに応じた設定:
季節変動がある場合、計画カレンダ(MD25
)を使用してロットサイズを動的に調整。 - 在庫回転率のモニタリング:
在庫分析ツール(トランザクションコード:MB52
)を活用し、在庫の回転状況を定期的に確認。
3. MRP実行時にエラーが発生する場合
確認項目
- 関連マスタデータの整合性:
- 品目マスタの「計画カレンダ」や「リードタイム」が正確に設定されているか確認。
- エラーメッセージの内容:
- MRP実行時に表示されるエラーメッセージを確認し、問題箇所を特定。
具体的な解決策
- 設定値の修正:
計画カレンダが空白または不適切な場合、適切なカレンダを割り当てます(SCAL
で設定)。 - マスタデータの登録:
必要なマスタデータ(リードタイム、計画カレンダなど)が不足している場合、MM01
またはMD61
で新規登録。 - エラーの根本原因分析:
トランザクションコードST22
でエラーログを確認し、根本的な原因を解消。
3. 未然防止のための実践的な対策
1. 設定ガイドラインの作成
- ロットサイズ設定の基本ルールを社内で標準化し、品目ごとに適用するガイドラインを策定。
2. 設定レビューの定期実施
- 四半期ごとまたは需要変動が予想されるタイミングで設定を見直し、実際の業務に適合させる。
3. テスト環境での検証
- 新しいロットサイズ設定を導入する前に、テスト環境でMRPシミュレーションを実施し、不具合が発生しないか確認。
4. まとめ
SAP PPにおけるロットサイズ設定は、生産効率や在庫管理の最適化に欠かせない要素です。不適切な設定は手配量のミスやエラーの原因となるため、定期的な見直しとトラブルシューティングが必要です。
本記事で紹介した具体的な解決策を参考に、設定値を適切に管理することで、効率的な生産計画を実現しましょう。
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