バックフラッシュは、SAP PP(生産計画)モジュールにおける生産実績計上時に、構成品目をBOM(部品表)の理論値に基づいて自動的に出庫する仕組みです。特に、使用材料の正確な計測が難しい場合や計測の運用がない場合に有効です。本記事では、バックフラッシュの概要、設定方法、適用のポイントを初心者にもわかりやすく解説します。
1. バックフラッシュとは?
バックフラッシュは、生産実績を計上する際に、BOMに基づいて構成品目を理論値で自動的に出庫処理する仕組みです。SAPにおける「バックフラッシュ」の特徴を以下にまとめます:
- 理論値での出庫処理
生産で使用した材料が自動的に指図から出庫されます。これは、生産量に応じた材料の使用量がBOMに定義されているためです。 - 使用例
水や液体物など正確な使用量を測定できない場合や、簡略化された運用を行いたい場合に使用されます。 - 自動化の利便性
個別に出庫伝票を作成する必要がないため、業務効率が向上します。
2. バックフラッシュの使用場面と利点
使用場面
- 使用量が計測できない場合
例:液体物や原料など、正確な使用量を測定できない場合。 - 簡略化された運用
出庫伝票の作成を省略したい場合。
利点
- 業務効率の向上
出庫処理が自動化されるため、入力作業が大幅に削減されます。 - プロセスの簡略化
計測が不要で、BOMに基づく処理が標準化されます。 - 一貫性の確保
生産指図に基づいた標準的な在庫管理が可能になります。
3. マスタ設定の方法
バックフラッシュを有効にするためには、以下の設定を行う必要があります:
品目マスタ設定
- トランザクションコード:
MM02
- MRP 2ビューを開く。
- バックフラッシュのフラグを有効化
- フィールド名:「バックフラッシュ(Backflush)」。
- この設定により、品目が生産指図の中でバックフラッシュ対象となります。
作業区設定
- トランザクションコード:
CR02
- 作業区の詳細設定を開く
- 作業区で「バックフラッシュ」を有効化。
- 適用条件の設定
- 特定の生産工程でのみバックフラッシュを使用する場合、条件を付けることが可能です。
4. バックフラッシュ処理時の注意点
バックフラッシュの運用には、以下の注意点があります:
1. 理論値と現場在庫の差異調整
- 理論在庫と実際の在庫数量に差異が生じる場合、棚卸を定期的に実施して調整します。
2. マイナス在庫への対応
- バックフラッシュを使用すると、在庫が不足する場合にマイナス在庫が発生する可能性があります。
- マイナス在庫を許可する設定を行うことで、この問題を回避できます。
- トランザクションコード:
OMJ1
- 対象品目やプラントでマイナス在庫を許可。
- トランザクションコード:
3. 実績計上時のエラー防止
- BOMの精度: 不正確なBOM設定は、誤った材料出庫を引き起こします。
- 在庫管理: 生産量に対して材料が不足しないよう、適切な補充計画を立てる必要があります。
5. まとめ
SAP PPにおけるバックフラッシュは、生産実績計上時の出庫処理を自動化する便利な機能です。特に、使用量の計測が難しい材料や簡略化された運用に適しています。品目マスタや作業区の適切な設定、在庫調整の管理を徹底することで、効率的な生産計画を実現できます。
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