ファントム組み立て品は、SAPの生産計画(PP)モジュールで使用される特殊な概念で、BOM(部品表)を効率的にグルーピングするための便利な機能です。特に、在庫管理が不要な中間品や一時的な組み立て品に活用されます。本記事では、ファントム組み立て品の概要、使用例、設定方法について、初心者にもわかりやすく解説します。
1. ファントム組み立て品とは?
ファントム組み立て品とは、BOM(部品表)の一部として定義されるもので、製品の製造指図において在庫管理されない中間品や一時的な組立品を指します。特徴は以下の通りです:
- 在庫管理されない
ファントム組み立て品は、在庫として管理されず、製造指図に展開された時点でその配下の品目が製造指図に直接登録されます。 - BOMのグルーピング機能
ファントム組み立て品を使用することで、複雑なBOMを簡略化し、管理しやすくなります。 - 展開時の構成品登録
製造指図を登録すると、ファントム組み立て品の配下にある品目が展開され、製造指図の構成品として扱われます。
2. ファントム組み立て品の使用例
使用例1: 中間組み立て品
製品Aの製造プロセスにおいて、以下のような構造を持つ場合を考えます:
製品A
├─ ファントム組み立て品B
│ ├─ 部品C
│ ├─ 部品D
製品Aを製造する際、ファントム組み立て品Bを在庫管理する必要がない場合、BOMにファントム組み立て品として設定します。これにより、製品Aの製造指図には部品Cと部品Dが直接展開されます。
使用例2: プロジェクトベースの製造
複数の製品で同じ中間品を使用する場合、ファントム組み立て品を設定することで、BOMの重複管理を防ぎます。これにより、プロジェクトごとに構成品を効率的に管理できます。
3. ファントム組み立て品の設定方法
1. 品目マスタの設定
ファントム組み立て品を有効にするには、品目マスタの特殊調達タイプを設定します。
設定手順
- トランザクションコード: MM02を入力。
- 品目マスタを編集。
- MRP 2ビューを選択。
- 特殊調達タイプに「50」を設定。
- この設定により、その品目がファントム組み立て品として扱われます。
- 保存して設定を反映。
2. BOMの設定
ファントム組み立て品を含むBOMを登録します。
設定手順
- トランザクションコード: CS01を入力。
- BOMを登録。
- ファントム組み立て品を構成品として追加します。
- 保存して完了。
4. ファントム組み立て品の利点と注意点
利点
- BOM管理の効率化
中間品をファントム組み立て品として設定することで、複雑なBOM構造を簡略化できます。 - 在庫管理の負担軽減
ファントム組み立て品は在庫として管理されないため、余分な在庫管理業務を削減できます。 - 柔軟な製造プロセス対応
ファントム組み立て品を使用することで、製造プロセスの変更にも柔軟に対応可能です。
注意点
- 正確なBOM設定が必須
ファントム組み立て品の配下にある構成品が正確に設定されていないと、製造指図で誤った構成品が展開される可能性があります。 - 在庫の追跡が困難
在庫管理されないため、現場での在庫状況を把握するためには別途棚卸などが必要です。 - リードタイムの管理
配下の品目のリードタイムが正確に設定されていない場合、製造スケジュールに遅延が発生する可能性があります。
5. まとめ
SAP PPにおけるファントム組み立て品は、BOMを効率的に管理し、生産プロセスを簡略化するための強力なツールです。在庫管理の負担を軽減し、柔軟な製造対応を実現します。しかし、正確な設定と運用が求められるため、適切なマスタ設定とBOM管理を徹底することが重要です。
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