SAP PPにおける連産品と副産物の活用ガイド:具体的な製造計画事例と設定方法

SAPノウハウ

SAP PP(生産計画)では、1つの製造指図から複数の品目を生産する際に「連産品」と「副産物」という2つの概念を活用します。この記事では、連産品と副産物の概要、設定方法に加え、実際の製造計画での活用事例や代表的な品目について詳しく解説します。


1. 連産品と副産物の概要

連産品とは

  • 主製品と同等の重要性を持つ品目です。製造工程で同時に生産され、コスト按分が必要になります。
  • 例: 石油精製工程でのガソリンとディーゼル燃料。

副産物とは

  • 製造工程の結果として得られる付随的な品目で、主製品と比較して重要度が低いものです。コスト按分の対象にはなりません。
  • 例: 製紙工程での木材チップやおがくず。

2. 連産品と副産物の違い

特性連産品副産物
目的主製品と同等の重要性を持つ製造工程の付随物
コスト按分按分される按分されない
品目マスタ設定が必要設定不要
BOMマスタ設定が必要設定が必要
原価計算主製品の原価計算に影響を与える主製品の原価計算に影響を与えない

3. 代表的な連産品と副産物

連産品の例

  1. 石油製品
    • 原油を精製して、ガソリン、ディーゼル、ケロシンなど複数の製品を生成。
  2. 畜産製品
    • 畜肉処理で、肉、皮、内臓などが同時に生産。
  3. 化学製品
    • 化学反応による複数の製品(例:塩酸と硫酸)。

副産物の例

  1. 製紙業
    • 紙の製造工程で生じる木材チップやおがくず。
  2. 食品製造
    • 大豆から豆腐を製造する際の「おから」。
  3. 金属加工
    • 鋳造工程で発生する金属屑。

4. 連産品と副産物の設定方法

連産品の設定方法

品目マスタの設定

  1. トランザクションコード: MM02
  2. 原価計算ビューで「連産品(Co-product)」フラグを有効化。
  3. 保存。

BOMマスタの設定

  1. トランザクションコード: CS01(BOM作成)。
  2. 連産品を構成品として登録し、コスト按分割合を設定(例:主製品70%、連産品30%)。
  3. 保存。

副産物の設定方法

BOMマスタの設定

  1. トランザクションコード: CS01
  2. 副産物を構成品として登録し、カテゴリを「副産物(By-product)」に設定。
  3. 保存。

5. 連産品と副産物を活用した具体的な製造計画事例

事例1: 石油精製業での連産品

  • 背景: 原油を精製する過程で、ガソリン、ディーゼル燃料、ケロシンが同時に生成されます。
  • 設定:
    • ガソリンを主製品、ディーゼル燃料とケロシンを連産品として設定。
    • コスト按分率を、需要予測や市場価格に基づき設定(例:ガソリン50%、ディーゼル30%、ケロシン20%)。

事例2: 製紙業での副産物

  • 背景: 紙を製造する過程で木材チップが発生します。木材チップは販売可能だが、主製品ではありません。
  • 設定:
    • 紙を主製品、副産物として木材チップをBOMに登録。
    • コスト按分は不要。

事例3: 食品業での副産物と連産品の併用

  • 背景: 豆乳を製造する際、豆腐(主製品)とおから(副産物)が同時に生成されます。また、大豆油(連産品)も生産されます。
  • 設定:
    • 豆腐を主製品、おからを副産物、大豆油を連産品として設定。
    • 大豆油にはコスト按分率を設定(例:豆腐80%、大豆油20%)。

6. 連産品と副産物の注意点

1. コスト按分の正確性

  • 按分率の設定が不適切だと、原価計算にズレが生じます。
  • 定期的な見直しが必要です。

2. 在庫管理の精度

  • 副産物の在庫が正確に管理されていないと、販売時に問題が発生します。

3. 実績計上時の注意

  • 連産品・副産物が正しく製造指図に反映されているか確認が必要です。

7. まとめ

SAP PPにおける連産品と副産物の活用は、生産計画を効率化し、多品目の製造をスムーズに実現するための重要な仕組みです。連産品はコスト按分が必要で、主製品と同等の重要性を持つのに対し、副産物は付随的な品目として管理されます。正確な設定と運用を行うことで、生産計画と原価計算を最適化できます。

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