SAPプロジェクト初心者の方が「移送業務を担当してください」と言われた際に、何から始めればいいのかわからないことも多いのではないでしょうか?
そんな方に向けて、SAPの移送について体系的に学べる内容をお届けします!
本記事のテーマ:「SAPの移送とは?概要と基本概念」
移送のプロセスは、SAPプロジェクトにおいて非常に重要な位置を占めます。本記事では、その基本概念と役割をしっかり押さえ、後続の記事をスムーズに読み進めるための土台を築いていきます。
移送とは?その役割と目的
移送とは、SAPシステムにおけるカスタマイズ設定やプログラム(オブジェクト)を、開発環境からテスト環境、そして本番環境へと移動するプロセスのことを指します。これにより、設定内容やプログラムが他の環境でも同じように動作するように整備されます。
移送が必要な理由
- システムランドスケープ
SAPは基本的に、「開発(DEV)」「テスト(QAS)」「本番(PRD)」の3つの環境で構成されることが多いです。この仕組みは、直接本番環境に変更を加えることを防ぎ、安全性を確保するためです。 - 品質管理の向上
開発環境で作成した変更内容を、テスト環境で十分にテストしたうえで本番環境に反映させることで、システム障害を防ぐことができます。
移送の基本プロセス
SAPの移送は以下の手順で進められます。
- トランスポートリクエストの作成
- 開発環境でカスタマイズやプログラムを行った際に、作業内容を記録するための「トランスポートリクエスト」を作成します。
- T-CODE:SE09やSE10を使用して管理します。
- 移送のリリース
- 開発環境で作成したトランスポートリクエストをリリースし、テスト環境や本番環境に移送する準備を行います。
- テスト環境での検証
- テスト環境でトランスポートリクエストをインポートし、設定やプログラムが正しく動作するかを検証します。
- 本番環境への移送
- テスト環境での検証が完了したら、本番環境へ移送します。本番環境での障害が発生しないよう、慎重に作業を進めます。
トランスポートリクエストとは?
トランスポートリクエストとは、移送するオブジェクトやカスタマイズ設定をまとめる「容器」のようなものです。
これには、どの環境にどの内容を移送するかの情報が記録されています。
トランスポートリクエストの種類
- カスタマイズリクエスト
システム設定の変更を記録します(例:組織構造や業務プロセスの変更)。 - 作業リクエスト
プログラムやレポート、ユーザEXITの開発など、ABAPに関連する作業を記録します。
クライアント依存と非依存
移送を正しく理解するには、クライアント依存と非依存の違いを把握することが重要です。
クライアント依存
- あるクライアントにのみ影響を与える設定です。
- 例: 特定クライアントでのみ有効なマスタデータやユーザー設定。
クライアント非依存
- 全クライアントに影響を与える設定です。
- 例: システム全体で共有されるカスタマイズ設定や開発オブジェクト。
SAPでは、T-CODE:SPROで設定のテクニカル情報を参照することで、対象がクライアント依存か非依存かを確認することができます。
移送作業を始める前の心得
- バックアップを取る
移送前には、既存の設定やデータをバックアップしておくことで、万が一のトラブルに備えることができます。 - 小さく分けてテスト
大きな変更を一度に移送せず、小さな単位に分けてテスト環境で検証しましょう。 - チーム内で共有
作業内容をチーム全体で共有し、オブジェクトの競合や重複を防ぐことが重要です。
まとめ
SAPの移送は、システム開発・運用の中で欠かせない重要な作業です。移送のプロセスを理解し、クライアント依存/非依存の概念を正しく押さえることで、効率的かつ安全に作業を進めることができます。
次回の記事では、**「トランスポートリクエストの作成と管理」**について詳しく解説します。ぜひ、全6回の記事を通じて、SAPの移送について体系的に学び、プロジェクト業務に役立ててください!
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